2012年4月27日

雨夜の焼鳥屋

どうしてもこれが食べたい、という考えに囚われることはそう多くない。それでも稀にはあることで、先週あたりから焼き鳥に気が惹かれてならなかった。何らかの呪いであるかと思う。

独りで行っても構わなかったのだが、Twitter で思い掛けず Lielackbutter 氏が連絡をくれた。それならそれに越したことはない。昨晩七時に吉祥寺駅にて待ち合わせ、公園前のいせやを訪った。

大学の頃に先輩と一度来たことがあるくらいで、当時も随分煤暈けた店だと思った記憶がある。

同じ吉祥寺のガード近くには総本店と称する店舗があり、こちらは何年か前に真新しく改装された。それで公園前の方はというと、以前に入った時と何ら変わっていない。屋台が劫を経た様な店構えで、一階中央の席に通されてスツールに腰を下ろすと、僅かながら表から風が吹き込んで来るのを感じた。

この日は夕刻から盛んに降りはじめ、このところ多い春に似ぬ驟雨であろうと多寡を括っていたら、慮外に長い雨となったので、待ち合わせの前に急遽駅ビル内で傘を購う仕儀に陥った。それでも店に席を占めるころには雨脚も幾分弱まっていただろうか。

雨天の影響があったか知れないが、店内を見回すと客の入りはそこそこで、しかしその割には妙に活気があり、程よい賑やかさであった。こはだ酢をつまみにビールを飲み、注文した焼き鳥を待つ間、Lielackbutter 氏から映画『バトルシップ』のあらましを聞く。

色々と面白い話だったが、就中印象深かったのは、曰く主人公に訪れる最初の見せ場が「ブロンド美人のわがままに応えてチキンブリトーを万引きするシーン」であるという件だった。

フィクション鑑賞と倫理観との関係に思いを巡らせるが、考えが纏まる気配は薄い。

『タイタンの逆襲』の梗概なども聞いている内に店じまいとなり、再び表へ出ると霧雨模様であった。バスは混み合っている様子なので、電車を使うことにする。中央線ホームにて別れ、武蔵境から歩いて帰宅した。