2013年7月15日

鮎の簗漁

テレビで鮎の簗漁が映っていた。

簗。

いつ、どこでのことかは忘れたが、簗に掛かった鮎の稚魚を拾い上げたのを覚えている。
ぬめりのある体が滑り落ちぬよう、両手で生卵を掴む様にそっと捕えていた様に思うが、そう細かい点ばかり記憶しているのは却って胡乱で、後から想像で補われたものだろう。考えてみれば、自分の手で掴んでいたものか、人が掴んでいるのを見せてもらっただけか、そこからしておぼつかない。

それからどうしたのか。柳葉魚の様に小さな稚魚であったから、河に戻してやったのだったか。口をぱくぱくと動かしている様が愛らしいと思ったものだが、水から引き離されて呼吸に喘いでいたのかも知れない。

多かれ少なかれ、その様な事実があったのは確かで、全てが空想による偽りの記憶ということはないと言える。しかしなにしろ河の名前から曖昧であるから、その時の簗が今でも同じ場所にあるものかどうかなどは、河に戻した鮎がその後どんな死を迎えたかと同じく、知り様もなく、また知ったところでどうにもならない。