2011年10月9日

雨暈

雨が降って来た。

昨日、傘立てのことを書きながら思い出していたのだが、どこかの駅に共用の傘というのがずらりと置かれているのを見たことがある。急に雨に降られた日など、手元に傘がない場合には、これを勝手に持って行って宜しい、但し後で都合の良い時に返してくれる様、という仕組みである。確か「駅のおたがい傘(さん)」などと称していた。

どこであったかというと、一時期盛んに使っていた駅で、しかしその時期が過ぎるとすっかり縁遠くなったところであるから、そう考えると恐らく下北沢かどこかではなかったかと推理される。然かとは覚えていない。

これを初めて見た時、江戸時代に同様のことが行われていたという記録をどこかで読んだことが想い起こされ、その時にはどこで読んだかもはっきりしていた様に思うのだが、今では確信がない。ただ、江戸時代の文章で僕が読んだことがあるものなどは数が知れているし、『雨月物語』だろうと見当はつく。

『雨月物語』に傘の話があったのは確かで、例によって怪異譚なのだが、その導入に、共用の傘の風習がどこかの地域のこととして語られていた記憶がぼんやりとある。誰も盗む奴などはいないので偉いものだ、くらいの事も書かれていた気がする。

「雨月」なら先日上野に寄ったついでで古書店で買ったはずで、従って部屋のどこかにはあるに違いないのだが、どこへ積み上げたものやら分からなくなってしまった。そう深くは埋もれていないものと思う。

また、よくよく考えてみればネットで検索しても良いことであって、あらすじくらいは Wikipedia にもあるだろうし、どこかに要約か、もしかすると原文も置かれているのではないか。

しかしそうこう書いている内に雨も止んだ様子だ。一先ずここまでとしておこう。

(追記:Twitter で、『雨月物語』にそんな箇所はない、というご指摘を頂いた。そうなるといよいよどこで読んだものやら皆目見当が付かない……と思う内に、どういう話であったか少し思い出したので検索してみたところ、どうやら『西鶴諸国ばなし』であったらしいことが分かった。しかし、『西鶴諸国ばなし』を読んだ、というはっきりした記憶がない。なにかと併録で一冊に収まっていたものだろうか。そうだとしたらもう一本は恐らく『男色大鑑』だろう)

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